「わしが出来る」に、付き合う技術(後編)

日常のハプニング
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我が家、戦闘態勢に入る

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前編:「わしが出来る」に、付き合う技術(前編)から読む

午後、父が畑仕事から帰宅した。

しばらく休んでから、我が家は戦闘態勢に入った。

父は、実家から二メートルほどの高さがある三脚はしごを、軽トラの荷台に乗せて持って帰ってきた。

この酷暑の中、荷台に乗せるのも一苦労だったと思う。帰宅した父は、汗だくだった。

もうこの時点で、嫌な予感しかしない。

まず、私は服装を整えた。我が身を守るための服装だ。

ゴム付きの軍手、埃よけのマスク、動きやすいズボン、足を守るために靴下を履いて、ライト機能を使うためにスマホをポケットに突っ込んだ。

真っ暗な部屋の、こたつ机の上で

まず、長いはしごを室内に持ち込んで、設置する作業からだ。

アルミ製なので、比較的軽い素材ではある。でも、なんせ長さがある。

植木屋さんが屋外で松の剪定に使うような、サイズのはしごだ。

それを屋内に運び入れるのは、かなり注意が必要な作業だった。

なんとか室内に入れても、設置するスペースはかろうじてあるレベル。普通のサイズの家なのだ。

あちこちぶつけないように気をつけながら、設置した。

最も高い部分は、ほぼ天井に当たりそうだった。

照明カバーを取り外すため、電気は消してある。

窓のない部屋なので、真っ暗だ。懐中電灯で照らしながらの作業になった。

父が脚立へ登る。私は、こたつ机の上に乗る。

暗い室内なので、なかなか手元も見えず作業が進まない。

途中、父が「肩が痛い」と言い出す場面もあった。

そうこうしているうちに、父が天井のソケットを、なんとか外した。

私はその間、不自然な体勢で、重い照明カバーを支えていた。

「だから、嫌だったんよ」

そして、なんとか外れて、私がこたつ机から降りようとした時。

足元に、母の小物があった。

危うく、転びそうになった。

この時が、一番怒りのピークだった。

「だから、嫌だったんよ。もう二度としない!」

私は、大きい声で言った。

でも、父はどこ吹く風だ。

本当に、危険な作業だった。

家電量販店で、八千円

しかし、これで終わったわけではない。

また小休憩を挟んで、近所の家電量販店へ出向いた。

もしかしたら、取り外した照明カバーと電球を引き取ってくれるかも、と持っていった。でも、それには千五百円かかると言われ、地域の収集に出すことにした。

良さそうな照明カバーを見つけたけれど、在庫がなく、入荷まで二週間以上かかると言われた。

近くにもう少し安くて、電気消費がさっきのと同じくらい少ないものが展示してあった。

こっちは在庫があるとのこと。

店員さんが言うには、2つの差は、リモコンの有無、カバーに使われている素材が、本物の木か合成か、透ける部分が強化和紙かプラスチックか、と言うところだった。

性能は変わらないが、素材がお安いものを使っているということだ。

たぶん、そんなものは生活の質にそんなに関わらない。母も高級な家具にこだわりがある方ではない。

しかも、父の一言が決定打になった。

「わしの部屋の(照明)リモコンも使っとらんからな」

結局、リモコンなし(たぶんあっても使わないか、無くしてしまうだろう)、消費電力の効率が良いもので、八千円くらいのものを買った。

この頃には、全員の機嫌が少し回復していた。

明かりが、ついた

買って帰ってすぐに、箱から出して、父と私で設置した。

母はまた、周りで賑やかしをしている。

つけるときは、取り外しより少しは楽だった。傘自体が、格段に軽量だからだ。

それでも、天井のソケットへの差し込みではかなりもたついて、カバーを支える私も、またまた不自然な体勢で頑張った。

ちゃんとはまって、電気がついた時。

三人とも、ホッとして、喜びで嬉しくなった。

明かりがついて、本当に良かった。

ソケットが適合せず、返品交換もあり得るかも、と思っていたので、一回で済んだことにホッとした。

その後、全員疲れ果てていたけれど、父はさらに軽トラに脚立を積んで、実家に戻しに行った。

「今日は外に食べに行こうや」

戻しに行く前に、父が言った。

「今日は外に食べに行こうや」

いつもの呪文だ。

私も疲れていたので、否やはなかった。

十七時半ごろ、父が帰宅して、おなじみのファミレスに行った。

もう、近頃このファミレスは、我が家の第二の台所のようだ。

車の中で、父が言った。

「入道雲が出とるな。暑い日がつづくなぁ」

作業中は、心の中で父に呪いの言葉を唱え続けていた私も、「そうじゃなぁ」と静かに同意した。

やっと、戦いが終わった。

とにかく、ひとつ問題が片付いた。本当に良かった。

これで母も、毎日数時間ごとに混乱することから解放された。

いや、解放されていない。また別の困りごとで、毎日混乱するだろう。

でも、とにかく一つ片付いたのだ。

それが、本当に良かった。

母が、Tシャツの英語を読んだ

ファミレスで、両親はいつものモーニング和食セット・ドリンクバー付き、私は唐揚げ定食を頼んだ。

父はかなり疲れたのか、無言なことが多かった。

この時点で私も、腰の痛みをかなり強く感じ始めていた。

しばらく無言の中、三人で食べていると、私の正面に座っていた母が、急に言い始めた。

「ゆげちゃんの服に、TAKE THE RISK OR LOSE THE CHANCE. って書いてあるな」

「リスクをとるか、チャンスをのがすか、ってことじゃな」

私はそれを聞いて、思わず笑ってしまった。

まさに私は、リスクを取って、チャンスを掴んでいる。

何年も、家計管理や投資について、勉強し実践してきて、それは確実に資産に反映されてきている。

スマホの待受画面も、最近読んだ本の気に入った小目次のスクショにしている。

『NOTHING’S FREE 代償を払わずにリターンを得ようとする”泥棒”になってはいけない』

その言葉に似ているなと感じて、なんだか面白かった。

母に言われるまで、自分の着ているTシャツに、そんなことが書いてあるなんて、認識していなかった。

白いTシャツを買う時、なんとなくデザインで選んだだけだったから。

オンラインショップで、六百五円の安いTシャツを選んで買っただけ。

なのに、そんな言葉が書いてあったなんて。

そして、こんな疲れた一日の最後に、母がそれに気づく世界線って、どんなんよ。

と、笑ってしまった。

まぁ、なんだかんだで

帰宅して、電気がついたことをみんなで喜んでいた。

私と母が、「もう次は業者に頼もう」と話していると、父は笑いながら「これだけのことで5000円で」と話に入ってきた。

学ばない男だな。

その5000円を惜しんだがために、3人で半日がかりだったのだ。危険も伴った。

父の考え方に、本当に賛同できない。

そんながっかりしたオチだった。

何はともあれ、今は部屋で、両脇に犬猫が寝転んでいるベッドで、このブログ記事を書いている。

まぁ、なんだかんだで、なんとかなった一日だった。

——ちなみに。

途中、父がお風呂場の重いばかりのおしゃれ木造棚も、この際移動させたいと言い出した。

いい加減にしろと思って、静かに言った。

「それは、弟が帰省してるときにして」

難を逃れた。

でも多分、弟の次の帰省の際は、また家族でなんやかんや言いながら、それをやる羽目になるだろう。

それは、また別の話です。

弟には、嫌な話なので、先に伝えるか、当日まで黙っているか、迷い中だ。

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