ペットケア

猫の名前を呼ぶと、犬がそっちを見る

猫の名前を呼ぶと、うちの犬が猫のほうを見る。調べてみると、犬が同居ペットの名前を覚えるのは珍しくないらしい。でもうちの犬は、自分の名前では来ない。猫が私に近づくと全力で追い払うくせに、自分は甘えてこない。犬にとって飼い主は「資源」なのだそうだ。憧れていた犬との暮らしとは、だいぶ違う。それでも七年、この犬は私に散歩と空を見上げる時間をくれた。
日常のハプニング

「わたしもよう分かりょうらんのよ」と母は笑った

父は「お前が楽をしたいからじゃろうが」と言った。お弁当の宅配は契約に至らず、大きな喧嘩になった。それから私は、三割の力で料理をしている。母はもう作らない。私の作り置きとちくわとシーチキンを、皿に並べるだけだ。そんな母が、亡くなった祖母を探して姉妹に電話した。「わたしもようわかりょうらんのよ」。「親の介護シリーズ」第29話。
ペットケア

言うべきことを、言わずに帰った

腎不全の猫を、かかりつけではない動物病院に預けた。面会に行くと、猫は尿で汚れたシートの上にいた。私は自分でシートを替えて、何も言わずに帰った。クレームだと思われたくなかったからだ。十年経っても悔やんでいるのは、猫が死んだことではない。
日常のハプニング

「今から、すき焼きは作らんよな?」と母は言いに来た

金曜日、冷蔵庫に100g450円の牛肉と、四分の一に切られたスイカがあった。翌日は弟の帰省。私は何も聞いていない。土曜の夕方、母が部屋に来て言った。「今から、すき焼きは作らんよな? お父さんがせっかく買ってきたとか言っているから」。父は私に直接言わない。だから、断る相手がいない。「親の介護シリーズ」第28話。
仕事にまつわる気づき

「食いっぱぐれない」を選び続けた30年

保育士、動物看護師、看護師。「手に職をつけなさい」の通りに、まじめに三回。資格はいつも次の仕事を連れてきてくれた。約束は守られていた。ただ、その約束には「豊かになれる」とは書いていなかった。ケアワーカーとして30年働いたアラフィフが、ここからの10年で「謳歌する」を始めるまで。
日常のハプニング

「私はいらん」と言うので、お古ということにした

母のスマホ用に充電器を買ったら、「私はいらん」の一言で拒否された。もったいない、というのが母の理屈だ。そこで父に「古い方だから使ってみて」と渡すと、数日後、それは母のところへ回ってきた。お古なら、無駄遣いにならないのだ。「親の介護シリーズ」第27話。
日常のハプニング

「もう、私はせん」と母は財布を渡した

金曜日の買い物のあと、母は「もう、私はせん」と財布を父に渡した。だが翌朝5時30分、「お父さんがお金を取り上げた」と二階に上がってくる。一晩で「預けた」が「取り上げられた」に変わった日の記録。「親の介護シリーズ」第26話。
日常のハプニング

「施設に入りたいわ」と、100円のソフトクリーム

「やることが多すぎて、しんどいわ。もう施設に入りたい」——認知症の母がそう言った朝。要介護認定の話には無言で去った母が、受診には準備万端で待っていた。一人で入った診察室と、帰り道の100円のソフトクリーム。親の介護記録、第25話。
日常のハプニング

「それは、困るなぁ」

帰省した弟は、母と二時間かけて印鑑を探し、愚痴に付き合い、ドライブにも連れて行ってくれた。それでも私が「もう一人暮らしの方が楽だ」と言ったとき、弟は何も言わなかった。「入院したい」には「それは、困るなぁ」と答えたのに。親の介護シリーズ。
日常のハプニング

荒れ模様の日、航路を失う日、凪の日

母は同じことをしているのに、私の心の在り方で、一日の色はまるで違う。今日は千五百円の買い物に一万円を返そうとする母がいて、「書いといて」を三回無視されて、それでも五分後には普通に会話していた。それでも凪だった日の記録。親の介護シリーズ。