辞める途中にある時間

仕事にまつわる気づき

要約

久しぶりに元職場へ行った。
退職の手続き、挨拶、思いがけない言葉。
感情が揺れた一日だったけれど、最後に残ったのは「行ってよかった」という、静かな実感だった。


本文

遠くなった道

今日は、すごく久しぶりに元職場へ行った。
「元」と言いつつ、席はまだ12月31日まであるのだけれど。

11月中旬から有給休暇に入り、家の近所だけで過ごしていたせいか、出勤の道がやけに遠く感じた。そりゃそうだ。片道50分かかるのだもの。
よく通った道なのに、久しぶりだからこそ、よく分かる。
遠い。
もう、この道は通いたくないな、と思った。


退職の手続きという現実

職場に着くと、事務長と個室で退職に関する書類の説明と記入。
ただ、今日の持参物について特に言われていなかった。

筆記用具がない。
今まで何度か退職を経験してきたけれど、こんな流れは初めてで、少し恥ずかしかった。

借りたボールペンで書けるところだけ記入し、残りは持ち帰ることにした。
「また持ってきて」と言われたけれど、「郵送させていただきます」と伝えた。

あとから考えると、その場で訂正できるように、という配慮だったのかもしれない。
でも、正直なところ、もう来たくなかった。申し訳ないけれど私の時間もただじゃないから。


予想外のお餞別

不手際はいろいろあったけれど、制服と駐車場のカードキーは無事返却できた。
それだけで、今日の目標は達成。

思いがけず、お餞別もいただいた。2万円。
ラッキー、と思った反面、これは今まで天引きされていたスタッフ積立費から出ているのだろうな、とも思う。

ありがたい。
でも、少し複雑だった。


利用者さんとの時間

看護部長さんやスタッフに挨拶をし、差し入れを渡したあと、
「気にしていた利用者さんがいるから、挨拶に行ってみたら」と声をかけられた。

その方は、疾患の影響で発声ができず、タブレットでやり取りをする利用者さんだ。
文字を打つのに時間がかかり、押し間違いも多い。

今日は、不思議と、ゆっくり待つことができた。

一生懸命、文字を綴ってくれて、「ありがとう」と打ってくれた。
涙が溢れた。

十分な関わりができなかったことへの後悔が、次々と浮かんできたけれど、
「すみませんでした」は言わなかった。
ここを、自分の懺悔の場にしたくなかった。

「お互い頑張りましょうね」
「いろいろ教えてくださって、ありがとうございました」
そう繰り返した。


「優しい」という言葉

最後に、「あなたは優しいから、もっと強くなって」と言われた。

私は、この言葉をずっともらい続けてきた。
呪いとまでは思わないけれど、どう受け取ればいいのか、いつも分からなくなる。

その先に続く言葉は人それぞれで、
でも、手渡されたまま宙に浮く感じがする。


日常に戻る

利用者さんの部屋ではあんなに涙したのに、
帰りの車ではガソリン残量を気にしてハラハラしながらスタンドへ向かっていた。

人間って、そんなものだ。
感情から、すぐ日常に引き戻される。

買い物をして、家に帰って、犬の散歩をして、夕飯を作る。
いつもの流れ。


残ったもの

それでも、今日、あいさつをしてよかった。
その気持ちだけは、はっきり残っている。

人生は、まだ続く。
私は今、「辞める途中にある時間」を生きている。

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